周防パトラ「レインボーバルーン」についての個人的な解釈

 Vtuber周防パトラ氏の「レインボーバルーン」が良かった。

 

【オリジナル曲】レインボーバルーン【周防パトラ / ハニスト】 - YouTube

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 その歌詞が良くて、解釈と妄想ががスルメのように広がっていくため文章書きます。3通りにまとめました。あくまで個人の感想なのであしからず。

 

 

カラフルな風船に掴まって風に流される周防パトラ

まっすぐな見方をすれば、レインボーバルーンは「風船によって浮かぶ少女が、ゴールもわからず風に流される情景」を描いた曲だ。

PVのビジュアルや「8000年」という歌詞も含め、少女は周防パトラ自身だろう。

しぼんでいく風船の危うさや、見えないゴールやカラスへの恐怖心を含めつつも、カラフルな風船とともにプカプカと浮かびながら、旅を楽しむ人生の豊かさが表現されている。

 

 

 

たのしいVtuber人生と、地獄に落とすカラス

この曲は、周防パトラが感じたVtuber活動を表現している。

開けっぱなしのテーマパーク

いろんな世界が

詰め込まれていた

これはYoutubeのことを指している。

入場料なく閲覧でき、そこには様々な動画が日々アップされ、一生かかっても見きれない有象無象のコンテンツが溢れている。

チケットはいらないけど

どこへ行くかは風任せなの

「どこへ行くかは風任せ」の「風」とは、視聴者をはじめとする周囲の環境のことだ。どのコンテンツが評価されるかわからないし、コンテンツのどの側面がウケてバズるかは、自分で舵取りできるものではない。

足を付くゴールは

地獄でしょう

 

まだ知らない

場所へ行きたい

そういった場において「足を付くゴール」を「地獄」と表現して、もっと新しいこと、やりたいことをしたいと願う。

 

 

そういった表現の上で、この一節が心配になる。

夕闇に誰かを落とすカラスを見たら

この旅だけは守りたいと思うでしょう

たとえファンがほとんどいないVtuberでも、本人が動画をアップするだけで活動は続けることができる。しかし、不本意な形で「カラス」の被害にあうVtuberはいるし、なんらかの断末魔を残して去っていく者もいる。

カラスは運営の場合もあれば、厄介なファンの存在なことだってあるだろう。周防パトラはよくわからない理由で動画を削除されたこともあるし、同グループの蒼月エリは収益化が唐突に解除され久しいが、そういう場合のカラスは「Youtube」なのかもしれない。

また個人的に、某部活動プロジェクトの件はバーチャルYoutuberというブランドを傷つける点において、本当に稚拙で最悪だと思っている。単なるスキャンダルではなく、ファンから「夢を見る」という逃げ場をなくした上でのやり方で、他のVtuberファンにまで「中の人の存在」や「労働環境」を印象づける、プロ意識に欠けた告発だった。

その影響は多くのVtuberが受けているだろうし、同じくくりにされる「Vtuber」というカテゴリだってカラスになりうる。

 

そう願えば急に怖くなった

これが生きてるって

ことでしょう

周防パトラは生きていきたいと願っている。旅を続けたいと思っている。

死にたいという感情は、死に直面していない、この調子で行けば生きていくという実感があるから生まれる感情だ。では、死を恐れて生きたいという感情は、身近に死がよぎるからこそ抱くものなのかもしれない。

これは周防パトラ自身のこととは限らず、今やっている活動の一部かもしれないし、ハニーストラップをはじめとする身近な誰かのことなのかもしれないし、全然別の何かかもしれない。

自分もいつカラスに地獄に落とされてもおかしくない。そういう実感の中で、レインボーバルーンを手に旅を続けていきたい。ゴールを目指して。(ゴールとは? ゴールしていいよね?)

 

ファンとしては、だからこそ今を大事に応援していきたいと思う。仮に裏で何かが起こっていても何も出来ない以上、出されたものを全力で楽しむことしかできない。お互いに楽しんでいることを願うだけだ。

 

 

 

すべての人間は風に流されることしかできない

PVの冒頭に「This is the song for you.」という、歌詞ではない一節が書かれる。

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「you」の解釈は難しいが、「この曲を聴いている人」だとしよう。

この曲はあなたのための曲だ。

 

そう考えると、風船を掴んで浮かんでいる人間は「あなた」であり、「風船」「風」「カラス」といった要素は、自分では変えられない所与の環境といえる。

私たちは生まれたときから人種や資本に大きく左右され、自分の力ではどうすることもできない環境の中で育つしかない。大人になったら自由になれるかといえばそうとも言い切れず、健康状態や幼少期から醸成された価値観はいつまでも尾を引く。

自分が行きたい場所があっても、風がそれを許してくれないし、そこにうまく順応してもカラスに地獄へ落とされていくのが人生なわけだ。

 

 

また、周防パトラはかなりライフハックを意識した生活を送っている。

とある配信で語っていた24時間の過ごし方では、「タイマーを使って進捗を管理する」「習慣の労力を減らすことすら習慣にする」「苦手なことに短時間だけ挑戦する」といったスキルを活かし、生活をハックしていることが伺える。

だからこそ、どうしてもハックできない部分について意識が向くし、与えられた環境が変われば現在は違ったものになっていただろうということがハッキリ見えているのだと思う。

【ハニストコラボ】明日から使えるためになる授業!#ハニスト学園 【ハニスト】 - YouTube

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それだけ「所与のもの」は強い。「自分の人生は自分で決める」と無邪気にいうこともできるが、それが叶わないほど強烈な所与は確実に存在している。

www.u-tokyo.ac.jp

私たちは風に流されることしかできない。カラスや見えないゴールに怯えることしかできない。

しかし、風船を掴むことはできる。夢のような旅を楽しむことはできる。

そういったわたしたちの希望を歌っているのではないか。

 

 

 

おわりに

周防パトラさんは、時折どこまで深読みしていいかわからなくなる歌詞を書く人だと思う。というか、ポジティブな歌詞を書くときはその裏のことも配慮する、非常に誠実なところがある。

シュガシュガ❤でびるずの「人生一度頑張るぞ!」とか「バーチャルだけど心は同じ/世の中簡単にはいかない/だったらもっと生きなきゃね」とかは深読みすると彼女の情念や8000年超の人生経験が透けて見えるように感じる。

【オリジナル曲】シュガシュガ❤でびるず【堰代ミコ×周防パトラ / ハニスト】 - YouTube

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上に書いた解釈もネガティブな妄想を抑えてて、例えばクリスマス曲で「なんでケーキがレインボーなの?/ハニストらしいクリスマスだね!」ってセリフがあるので「レインボー = ハニスト = 風船」みたいなとこから妄想しだすと、なかなかハードなものが思い浮かぶので、ちょっと書くことをはばかられた。

 

Vtuber、ちょっとしたことでバズって、そっち方面からきた人に当人が応えて雑談枠の雰囲気が変わって見なくなっちゃう、とかも割とある。だから、とあるVtuberが活動を続けていても、私の中ではいなくなったことと同義な状態になることだって当然あるだろう。

君が君が忘れなければ

私はいるよ

【オリジナルソング / Vtuberの歌】ぶいちゅっばの歌 フルを3人で歌ったよ〜♪ 【周防パトラ / 蒼月エリ / 堰代ミコ ハニスト】 - YouTube

だからこそ、自分の好きを大事にしたいし、それが叶っている今を大事にして楽しみたいと思う。