「夜巡る、ボクらの迷子教室」クリアした

ノベルゲー「夜巡る、ボクらの迷子教室」クリアした。エロゲです。

最近「ランス10」「戦国ランス」をクリアしたし、Vitaに入ってる一軍のタイトルも元エロゲですし、エロゲを多くやっている。エロを求めているわけではなく、自身の精神力がエロゲに適しているという感じ。

 

各ルートの感想

ネタバレします。

共通ルート

よかった。

登場人物がそれぞれダメな部分を抱えつつ、がんばって社会で生きていこうとしているのがうまく描写されている。教室という居場所で楽しくしようとしているのが伝わってくるし、天体観測してはしゃぐ生徒たちのシーンは、とても感慨深いものがあった。この「楽しくしようとしている」というのが大事で、みんないい子たちなんだなとわかって良い。

 

この作品、モニョモニョするとこは多々あれど、リアリティあって感心するとこも多い。

たとえば、綾子さんが普段ほとんどしゃべらないのに、娘のりこが他人と関わろうとしたときだけ、他人の迷惑にならないようにストップをかけるところとか。好きな表現じゃないけど、いわゆる「毒親」とか言われたりするやつといえる。ところが、あのタイプは親とか関係なくて、部下とか後輩みたいな存在にも、そういう振る舞いをすることがあって、それ以外の関わり方ができない上に、フレキシブルに変えることもできないので、その「娘ポジション」になってしまうと、地獄をみることが多い(なにかあったんですか)。小学校の先生、あるいは先生モドキとかに多い(なにかあったんですか)。そういう振る舞いは能力があることが前提なので、それを否定すると無能認定にも捉えられ、すねちゃったりしてどうあがいても地獄(なにかあったんですか)。

 

 

はやてルート

全体的に薄っぺらすぎるし、特にエロシーンで童貞の妄想感がきつくて、楽しくなかった。

序盤ではじめて歪みが現れるのが、きなが小テストではやての名前を書いたら激昂するシーン。ここで、はやてにとって名前がキーになるとわかる。そしてそれを元に物語が展開していくわけだが、最終的に「本人の早とちりでした」はひどくねーか。コントか。そもそも今まで人扱いされてこなくて、つい先日も嘘つかれて監禁までされてんのに、なぜそいつらを信じられんのよ。

ていうか「はやて」って名前としてあんまよろしくないんじゃなかったっけ。疾病的な。両親あんな外面気にする割にそこはスルーなのか。

悪口しか出てこないから終了。主人公の父親関連もよくわからなかった。

 

 

きなルート

めちゃくちゃリアルだった。

きなのあの喋り方。あの媚び媚びと言っていい喋り方は、遅くとも中学生くらいまでには矯正される。それでも20歳くらいのきながあの喋り方を続けてしまうのは、単につらい過去があったとか、コミュ力不足なせいでなく、コミュニケーションの正解がわからなくなっているからだ。とりあえず笑顔で、とりあえずウケのいい、子供っぽい感情表現をすることで、なんとか周りと付き合っているためだ。そのあたり声優さんの表現がうまかった。初対面から敬語がなくなって、自分の感情に支配されちゃうとこまで。

なにより私は、きなみたいな女性に会ったことがある。詳細は省くが、まさにあんな感じだった。私は仲良くなりたかったが、話をするうちに「この子は嫌なときに嫌と言ってくれなさそう」という疑いが晴れず、関係を進めることができなかった。きなみたいに、影があるが表向きの体裁は整えているが自分の好き嫌いを出すことができない人に対して、必要以上に隠し事をしてそのことを必要以上に悔いている人に対して、強引に踏み込めるほど私は傷つき傷つける覚悟がなかった。だからこそ、きなが「勉強を教えてほしい」と言えたことは素晴らしいことだし、そのおかげで主人公と仲良くなれたと思う。プレイしながら、当時のことを思い返していた。おーん。

他にもいじめが進行していくときのいやーな感じの表現もよかった。きなは勉強できないから治安の悪い高校に行っちゃうんだな。勉強のできるできないで、治安まで決められてしまう理不尽に直面したわけだ。あとさー、あの「もうだめだ、消えてしまいたい」となったときに窓から見える光がめちゃくちゃきれいに見えるのとか。ライターてめえ元当事者だな!

 

気になったのが、展開のために何かを犠牲にしちゃってることが多かったところ。

いじめ主犯格の女子がきなの女性器に虫(レッドローチ)を入れようとするシーンがあるんだけど、周りからするとふつうにドン引きっすよね……。しかも、彼氏とペットショップデート中「ウフフ、これ使っていじめてやろー☆」って思ってわざわざ買ってくるのがひどいし、それをビニール袋に持って学校にこられる神経が意味不明すぎる。そしてカバンの中でガサゴソ言わせながら登校して、きなの存在を確認したのち大量の虫が入った袋を持っていき、いじめ仲間の前でそれを取り出す。友達やめるわ。

あと、学校で花火やって管理人にめちゃくちゃ怒られるところとか。前半のコメディシーンのおかげで後半のシリアス展開が引き立ってるのは相当あるんだけど、もう少しうまくやってほしかった。

その他、2017年のゲームで「大検」って言っちゃうところとかは本当にダメだと思う。「高認」に変わったの2005年だぞ。あんた高校の先生だろ。

 

りこルート

エロゲでしかできない話だった。こういう話をするために、DMMGamePlayerとかで敷居を高くしてるんだな〜〜???

この作品の登場人物は全員18歳以上なんだけど、まぁ小学ろくねんせいくらいな感じ。そのりこをシングルマザーから預かって、仕事サボって食って寝てセックスしてな数日を過ごすシーンがある。当然エロゲ以外でやると完全にアウトだし、エロゲだと言ってもアウトだし、99.9%以上が「最低だ」と感じると思う。

でも最低な行為であることに意味がある。

これまで主人公は「ちゃんとしなくてはならない」と強迫的なまでに真面目に生きてきた。しかし、それはなんのためなのか。その思いは少々つまづいたくらいでは見つめることはできず、しなければならないことに尽力しているうちに徒労感にまみれ、生きている意味がわからず、どうしようもなくなってしまう。

そんなときに、周りを一切気にせず自分の好きなことをする行為が、ロリとのセックスなわけだ。職場に連絡も入れず、自分の生徒を待たせ続け、イリーガルな行為に耽る。肉体的にも精神的にも酷使するし、なおかつ過酷な環境によって精神的に大人にさせられた部分に、助けるべき主人公も乗っかっているわけで、本当に最低だ。

 

でも、割と共感する人も多いんじゃないかと思う。ロリとセックスしてー、でなく、もう何も考えずなにかに没頭したい、という感覚が。

神経症の治療法に「森田療法」というのがあって、要は「何も考えずひたすら作業することによって治る(治るという言葉すら余計)」というもので、それを必要としている人は多いはず。情報過多な時代で、私だって一人でゲームをしてても何かを得ようと意識高くいるわけで、考えようが考えまいがひたすら作業をする時間というのは実は得難いものである。だから、最低な行為について、いつもなら無意識に働いてしまうストッパーを外してただ没頭することが癒やしになる。最低だろうがイリーガルだろうが関係なくする、最低な作業に意味がある。何も考えず、ただ、やる。そしてその先に、心の底から気づけた結論が「俺は人を愛したかったんだ」であり、彼は学校に戻っていく。

こういう、理解できる人にしか理解できないことを扱うのは、最高に文学してるな、と思う。

 

 

おわりに

そんな感じでした。嫌なところはゲーム内外に多々ありましたけど、それでも「プレイしてよかった」と感じられるものだった。

いくつか他人の感想をチラ見したところ、私と全然ちがくて、「はやてが可愛かった」とする人が多かった印象。その気持ちもよくわかる。表面上の要素を組み合わせると、一番ウケそうなのははやてだ。家出少女で居候で、ツンツンしてるけどたまに優しくて、家族の問題もわかりやすくて。きなはあざといし、メンヘラだし。りこはロリ枠だし、危うすぎるし。でもやっぱり私ははやてルートは薄すぎると感じたし、きなルートとりこルートのテーマはかなり繊細で難しい部分を扱っていて、展開と結論にすごく感動した。一度つまづいたあと、どうやって生きていくか、というこの作品のテーマにあった話だったと思う。

 

きょうびゲーム1本9504円って、そうとう高価なタイトルだと言える。 しかし、私は買ってからしばらくプレイできなかった。DMMGamePlayerが認証エラーを起こし、無料ゲーの宣伝動画を見させられながら、サポートのテンプレ返信を複数回喰らいながら試行錯誤し、結局裏技みたいな方法で起動することになった。海賊版対策なのはわかるが、めちゃくちゃ不誠実に感じたし、エロゲが「エロゲを遊ぶ人用」にしてしまう、なおさらエロゲが売れない、手を出しにくいものにしてしまう部分だと思う。この1年くらい様々なエロゲを触っているのだが、不満はほとんどこの認証の部分で、ディスクレスにすらできないとかつらすぎる。それでプレイしてみたら、誤字脱字、バグ満載というのは、非常に厳しい。DMMはアップデート情報くらい載せといてほしい。アップデート確認くらいは基本な気がするけど、DLsiteやSteamはDLした時点で更新されてるわけで。そして認証を全部DMMGamePlayerで統一するとかしてもらえんかねぇ。あとセーブデータをクラウド管理とか。できないなら認証アプリとして別にしてくれ~~~。

まぁなんていうか、CSで出てるもののほうが安心してプレイできるんだろうなぁ。とはいえ、今作のりこルートとかエロ抜きじゃ成り立たないし、「新妻ラブリケ」とかエロシーンがキャラ描写と絡んでてよかったので、そういうのを切り捨てるのは妥協に感じる。その上エロシーンが重要かどうかを調べるとしたらネタバレくらいそうだし。「グリザイアの果実」「ホワイトアルバム2」とか興味あるけど、たぶん最近のシナリオが評価されているような作品って、エロシーンも込みの好評な気がする。といいつつ今Vitaでやってるのは「月に寄りそう乙女の作法」っていう、元エロゲ……。